静岡県藤枝市岡部町朝比奈地区は、清流「朝比奈川」の両岸斜面に茶畑の広がる、静かな山間のまちです。
お茶だけでなく、筍や桜、鮎、蜜柑、「朝比奈龍勢」など、四季と歴史を五感で感じることができます。
お茶の栽培に適した自然環境から歴史は古く、室町時代には朝比奈地区で茶栽培が始まっていたとの記録が残っています。
朝比奈地区は茶処静岡の中でも、京都宇治、福岡八女に並ぶ日本三大玉露の産地として、農林大臣賞をはじめとする数々の名誉に輝き、日本の茶業界をリードしてまいりました。
朝比奈川から沸き立つ朝露を浴びて育った茶葉は、甘みのある滋味に彩られ、上質なお茶に仕上がります。
被覆栽培とは、茶摘みの20日程前、新芽が出る頃から、茶畑に日よけをかぶせ、直射日光を遮って育てる栽培方法です。
日光を遮ることにより苦み成分(タンニン)が抑えられ、旨み成分(アミノ酸)が増し、豊かな香りとまったりとした甘みが生まれます。
この被覆栽培で作られたお茶こそ、日本茶の最高峰「玉露」となるのです。
朝比奈地区は、被覆技術が高いことで知られています。
近年の被覆栽培では、安価で長期間繰り返し使用ができる「寒冷紗」を使った日よけが一般的になってきていますが、朝比奈地区では今でも「藁」を編み上げて作った「菰(こも)」がかけられた、昔ながらの茶園風景を見ることができます。
ここ朝比奈には、土地を知り、伝統を知り、お茶を知る「玉露名人」と呼ばれる茶師たちが存在します。
玉露名人の玉露は、手間暇かけて栽培した茶葉の中でも一芯二葉だけを丁寧に手摘みし、針のような芸術品に揉みあげられ、完成します。
見た目の美しさ、口いっぱいに広がる旨み、そのすべてが日本最高級の名にふさわしい「玉露」として仕上がります。
決して交通の便が良いとは言えない朝比奈地区の玉露名人のもとには、毎年、日本国内だけでなく世界各国から玉露に魅了された人々が多数訪れます。そして玉露名人の人柄に惹かれ、再訪する人も少なくありません。